身体で感じる「心地よさ」を大切に
 住まいづくりの要点は、そこに暮らす人々が、快適で健康な生活を営むことができる空間をつくり出すところにあります。
 では、どのような住宅が、そのような空間をつくり出すのでしょうか。
 ここでは、住みやすさ、について考えてみたいと思います。
 家づくりの基本は、気候風土に合わせることにあります。わが国の伝統的な生活様式は、素足の生活文化でした。明治維新後、元勲たちは文明開化に合わせるように「無理やり」洋装を率先して行いました。
 なるほど、着慣れてみると洋装もいいものだ、ということになりましたが、やはり靴のまま住居で生活する、ということはさしもの文明開化でも定着しませんでした。
 現在でも90%以上は、素足の生活です。
 この素足の文化が、私たちの「畳」や「木」に対する感性を豊かにしていたと思います。
 身体で感じる「心地よさ」ということを大切にし、しかもそれを自然と調和する形で巧みに空間的に配慮してきたのが、日本の家づくりでした。

健康を無視した家づくりも行われている
 しかし、戦後の数量を追う住宅づくりでは、建物の配置など、自然と調和する、自然を巧みに配する、という視点が欠落してしまっていた、と思います。
 高温多湿の日本では、空気の流れが、つまり通風が家づくりのポイントです。
 しかし最近では、この通風や、太陽の一日の動きなどを無視した家づくりが行われ、住宅そのものの寿命を短くし、また、とても「健康な家」とは言えないような住宅が増えています。
 風の流れを感じられず、風通しの悪い家。そこには、結露の発生、ダニの発生、カビの発生などの確率が高く、とても住まう人の健康で快適な暮らしを支える住まいとは言えないものとなっています。

本物の材料を使うということ
 私たちは、日本人が「心地よい」と感じられる質感ある材料を使い、風を読み、光を読み、緑を考える家づくりが最も大切だと考えています。
 「心地よい」と感じられる材料とは、例えばムク材を挙げることができます。
 しかし、こうした本物の木材を使うと、自然に割れが生ずることもあります。
 住まい手の中には、割れたことを粗悪な木材を使ったからと誤解する人もいますが、必ずしもそうではありません。
 自然の材料だからこそ起きる現象です。もし、割れない材料を、ということになると、そうした材料を作るには、工業製品と同様に化学物質を3〜5種類注入した新建材の材料を使うこととなります。
 化学物質は温度の上昇によって気化します。気温が高くなると、国の環境基準を超えることもある。私たちは、やはり自然の素材を使うことが一番だと考えています。
 家づくりは赤ちゃんとお年寄りの住みやすさを基準にすることが原則です。
 私たちは、きれいな空気、おいしい水、木の香り、そして緑の中ではじめて心地よく落ち着いた暮らしが営めるのです。
 私たちの地元でも、子どもたちに安全で快適な学校空間をつくるために、木造校舎がどんどん建つようになりました。このような取り組みが広がれば、もっと本物の木材の持つ力を多くの人々が知ることになると、考えています。

安い・高いより中身を評価できる力を付けよう
 ところで、家づくりでは単純に「安いからいい」、「高いからいい」という考えを持たれる方がいらっしゃいますが、そろそろ再考する時期にきていると思います。
 「坪いくらですか?」「坪70万円、高いですね・・・」といった会話が聞かれることもありますが、問題は中身です。
 洋服の青山さんは10万円も出すとすばらしい背広が買えます。一方、銀座の英国屋さんの背広は100万円です。
 英国屋さんの背広は手作りです。生地、糸、ボタン、裏地と厳選されたものを使います。最後は、技術力で一着100万円なんですね。青山さんの方は機械裁断、糊付け、すべて合理化で製作します。ユーザーもそのことを理解して買っています。
 ところが、住宅になると、こうした違いが理解されません。
 どのような家づくりをしたいのか。どのような材料を使いたいのか。そうした住まい手自身の考えをもっと明確にすべき時に来ています。
 無意味に高い家づくりをする必要はありません。しかし、どのような住宅にしたいのか、という考えはきちんと持つべきだと思います。
 これからも、私たちは、家づくりの「ほんとう」のことを理解してもらう運動をやっていきます。